【レビュー】映画「何者」は観客の心をえぐる就活サスペンスだった

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公開初日に映画「何者」を観てきました!

 

「何者」の原作は朝井リョウさんの小説で、彼の小説が映画化されるのは「桐島部活やめるってよ」に続いて二回目。

「何者」は2012年に直木賞を受賞しています!

 

僕は先輩であるということもあり個人的に朝井リョウが好きなので(講演も見に行った)、映画化をとても楽しみにしていました。

 

シンプルに感想をいうと、とても心をえぐられ胸が痛くなりました。

 

 

「何者」の超ざっくりしたあらすじ

主人公は大学生で就活生の二宮拓人。

彼とその友達の光太郎、瑞樹、彼女の友だちの理香と彼氏の隆良たち五人の就活を描いた作品。

就活を通して人間の裏側、本心が見えてくる物語。

 

登場人物紹介f:id:yagi-renta:20161016160330p:plain

登場人物は少なく、ほとんど上の6人で話が進められます。

知ってる人は読み飛ばしてね!

 

二宮拓人(佐藤健)

主人公。

大学では演劇サークルに入り、熱心に脚本を書いていて将来は演劇で食っていこうと銀次(後で登場)と語っていたが、ある時自分達を客観視して「寒い」と感じてしまい就活を機に演劇をやめてしまう。

他人を冷静に分析するのが好きでいつも観察している。

瑞樹に恋心を抱いている。

 

神谷光太郎(菅田将暉)

拓人の友達。

拓人とルームシェアをしている。

大学ではバンド活動に力を入れていた。

明るく周りを盛り上げる性格だが、実は周りがよく見えている。

 

田名部瑞月(有村架純)

拓人の片思いの相手で、光太郎の元カノ。

アメリカでインターンをしていて就活のタイミングで帰国した。

人の話をしっかり聞いてあげるタイプで本心から人のことを褒められるような女の子。

しかし家庭環境が少し複雑になり就活でもそれに振り回される。

 

小早川理香(二階堂ふみ)

瑞月の友達。

拓人と光太郎の部屋の上の階に住んでいる。

アメリカ留学を経験しており、自分の生活をポジティブに着飾っている意識高い系。

隆良とは付き合って3週間だが同棲している。

 

宮本隆良(岡田将生)

理香の彼氏。

就職活動なんてバカバカしいと考えていて、他の四人の就活を冷ややかな目で見ている。

今は自分を高める時だと称して本を読んだり人脈を広げようといろんな人にあったりしているが結局は何もしていない。

 

サワ先輩(山田孝之)

拓人のバイト先の先輩。

落ち着いていて人をよく見ており拓人への指摘が鋭い。

 

銀次

拓人と演劇をやっていた元親友。

しかしある時拓人と喧嘩し、劇団をやめて新たに自分の劇団を開き拓人とは全く逆の道を歩み始める。

小説中でも劇中でも直接登場することはない。

 

共感が止まらない

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f:id:yagi-renta:20160926163439p:plainここから先ネタバレが多くなります。

物語は基本的に主人公が自己投影できるキャラになっていてそのキャラに起こった出来事を追体験していくことになります。

しかし「何者」では登場人物それぞれに共感できてしまう。

そしてそのどれもが僕らの胸を痛めます。

僕は特に拓人、隆良、理香に共感しました。

 

拓人への共感

拓人はいつも他人のことを分析してその人の粗を探し、裏垢で呟いています。

なぜそんなことをするのか。

それは自分に自信がないから。

人をバカにしないと生きていけない。

実は拓人は1年目の就活に失敗し就職浪人を経験しています。

一度自分が社会から拒絶されることを経験し臆病になってしまっている。

こいつにはこんな悪いところがあるんだ、こいつは現実が見えてないバカだと自分に言い聞かせて自分を正当化するしかない。

でも本当は自分が一番劣っているんじゃないかと心のどこかで思っている。

 

これは2ちゃんに悪口を書き込む人の心理と一緒で、「自分はあいつの粗がわかっている」ということを示して他人に認めてもらいたいいう思いからの行動です。

 

僕もそういう考えを持ってしまう時があります。

「あいつはまあどうせ成功しないよ」

こういう言葉は自分に自信が持てなくなっている時に出てしまう言葉。

誰しもあるんじゃないでしょうか?

 

拓人は銀次、隆良に「頭の中にある内はいつだって何だって傑作なんだよ」というきつい言葉を放ちます。

これはきっと自分が一番身にしみて感じていたことなのでしょう。

人を心の中で馬鹿にして、自分はそんな行動をできるわけでもない。

そんな自分に向けた言葉でもあったと思います。

 

隆良への共感

彼は自分の考えが一番正しいと考えているタイプです。

もっと正しく言えば自分が一番正しいと思い込むのに必死なタイプ。

そして拓人や瑞樹たちに就活する意味を問いかける。

相手が何も言えないくらないに言葉を投げつけて論破した気になって自分を正当化する。

 

彼も結局は自分に自信がないだけ。

自分の考えが本当に正しいかわからないから他の人の考えを排除しようとしてしまう。

 

銀次との講演がダメになった時には自分を正当化するためにたくさんの言い訳を並べていました。

そこで瑞樹を怒らせ、「10点でも20点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。」と言われてしまう。

自分に自信がないから外に出さずにずっと100点のまま内に留めてしまうんでしょう。

 

行動もしてないのに考えだけで自分はすごいと思うってしまい結局は行動しないことって皆さんもありますよね?

 

理香への共感

最初に言っておきます。

彼女も自分に自信がない。

 

自分には中身がないと思っているから留学歴など今までの経験をひけらかすしかない。

そして自分の頑張っている姿を誰かに認めて欲しいからSNSで自分の頑張りを実況中継する。

常に人に認めてもらいたいから自分を綺麗な言葉で着飾り、弱い部分を見せることができない。

 

僕も今取り組んでいることをSNSで拡散し、誰かに認めてもらって元気をもらうことがあります。

 

彼らの弱い部分を見ると同時に、自分の弱い部分を再確認させられとても胸が痛くなりました。

 

小説との違い

演劇的演出

正直映画の前半を見ている限りでは「小説の方が面白いな…」と感じてしまい、「有村架純かわいすぎんだろオイ」ぐらいにしか考えていませんでした。

 

しかし監督の三浦大輔さんは演劇界の人だけあってラストのどんでん返しの部分では映画ならではの演劇的演出が盛り込まれ、より拓人の闇が引き立てられて心がえぐられました。

 

セリフ

でも少し残念だったのがセリフ。

小説を読んでいる時に心に刺さった言葉が結構省かれていて残念でした。

映画にするためにはしょうがないんでしょうけど。

 

「何者」はホラーより怖い就活サスペンス

「何者」の大きなテーマは就活にありますが、見所はここまで紹介してきたように就活を通して見えてくる人間の闇です。

それはどんなホラーよりも身近な恐怖。

オバケなんて実態のないものよりも実在するのに見えていない人間の本当の感情の方がよっぽど怖いと思いました。

 

まとめ

内容は重いですが観に行ってよかったです。

自分について見直せるいい映画だとも思います。

 

ぜひ観に行ってみてください。

 

ちなみにこの前「何者」のアナザーストーリーである「何様」が発売されました。

光太郎の過去や理香と隆良が付き合うことになった理由などが描かれています。

キャッチコピーの「何者かになっただなんて、何様のつもりなんだろう」がそそりますね。